JPモルガン銀行ジェイミー・ダイモン氏の年次レター

ジェイミー・ダイモン(Jamie Dimon)氏をご存知だろうか? JPモルガン・チェース銀行のチェアマンとCEOを務めるダイモン氏は、米国金融界のみならずグローバル実業界を代表するビジネスマンかつ業界のご意見番としてつとに名が知られている。同氏がシェアフォルダー向けに発表している年次レターは毎年ビジネス業界で注目を集めているのだが、最近発表された2020年の総括は殊更興味深い。

実業界のど真ん中をいく同氏のことゆえ、ビジネスライクでロジカル一辺倒なものかと思いきやさにあらず。逆にウェットでまっとう至極な内容となっている。たまにはこういった人の話に耳を傾けるのも、思考の偏りを避けるという意味で一読の価値があると思います。また、英語の勉強になるのと同時に、どういったニュアンスで語っているのかがよりわかると思うので、時間があれば原文をみてみることをお勧めします。

今年のレターで触れているのは、以下の6点。
I. 市民としての企業:企業のパーパスとは
II. リーダーシップから学ぶ教訓
III. 銀行に押し寄せている巨大な脅威
IV. JPモルガンが直面している課題
V. コロナ ウィルスと経済
VI. 公共政策:中国、コロナ ウィルス、そして我々自身の力量によって試される米国の例外主義・競争力・リーダーシップ

一章ごとに要点をご紹介していこうと思います。

第一回目の今回は、「市民としての企業:企業のパーパスとは」I. The Corporate Citizen: The Purpose of a Corporation

この章のポイントは以下の3つ。彼自身のコメントとともに、3つのポイントとその注釈を以下日本語で列記します。
1. Businesses must earn the trust of their customers and communities by acting ethically and morally.
2. Being a responsible community citizen locally is critical, and it is easy to understand why.
3. Being a responsible community citizen nationally, or globally, is more critical and more complex.

企業が健全で活気に溢れた状態であり続け、かつ長期的なシェアフォルダー・バリューを作り上げるには、長い期間に渡って安定した業績を維持する必要がある。シェアフォルダー・バリューというと短期・短絡的な売上至上主義的なイメージを持つ人も多いが、企業のトップは、自社において正しいことがきちんと遂行されているかどうか、毎朝自問して確認するべきだ。企業は一つのチームであり、日頃の様々なタスクを愚直にきちんとやり遂げることがシェアフォルダー・バリューの創生につながる。

  1. 企業はモラルや倫理(エシック)を保つことで顧客やコミュニティの信頼を得なければならない。
    ・ 評判が大事。よい評判 ・信頼を得るには、日々の仕事を丁寧にこなすこと。
    ・ 優良企業の定義
       必要な要素:良い製品、公正で透明度の高いプライシング、丁寧で速やかなサービス、継続的なイノベーション
       顧客への誠実な対応
  2. ローカル・コミュニティの一員として誠意をもって顧客や地元のコミュニティに接すること。
  3. 全米規模・あるいはグローバル規模でのコミュニティの一員としての自覚をもって対処することは簡単ではないと同時に、非常に重要なポイントである。
    ・ JPMorgan Chaseは公共政策策定にも積極的に関与し、世界の重要課題(気候変動、貧困、人種差別など)解決に向けて努力している。よくデザインされた公共政策がこれらの課題解決に寄与すると信じており(個々の企業が個別に対処するより効果的)、かつJP Morganのような大企業だからこそ、その過程で貢献できることがあるとも確信しているからだ。
    ・ 企業がロングスパンで繁栄するには、その事業の基盤となるコミュニティがしっかりしていることが前提となる。
    ・ ローカルコミュニティにおける大きな課題を解決しようとした時、官民相互の協力が更なる相乗効果を生み出す。
    ・ あるローカルコミュニティでできた成功事例をテンプレート化し、他の地域(アメリカ国内の他地域のみならず世界展開も)に横展開することは効率的。
    ・ このプロセスにおいて重要なのは、その企業のトップがコミットすること、実際の作業にあたるのはその企業のトップ人材を何人か揃えること。
    ・ JPMorganの役割として、長期的でデータドリブンな事業の創生、慈善的な投資を行う。

原文はこちら

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