ベイエリアおよび米国全体の市況と働き方最前線 (2/2)

前回は、コロナ後のベイエリア及び米国全体の市況について、Bay Area Council Economic Institute のプレゼン資料をベースに現状をざっとみていただきました。今回は、働き方に関するパネルセッションの概要と、セッション全体+その他の見聞からの洞察・インプリケーションをお伝えしたいと思います。

目次

ベイエリアの働き方最前線についてのパネルセッション

登壇者は働き方改革の先端にいる2名、Job Torab氏はBill.com(米国で非常に多くの企業がここの給与支払いシステムサービスを使っている)の職場体験改善関連のバイスプレジデント。Brett Hautop氏は、Workshapeという、実践的な働き方改善コンサルティングを提供する企業のファウンダーである。その前はLinkedInでTorab氏同様、VP Workplaceとして同社の職場体験改善の責任者を務めていた。 二人ともとてもカリスマ性があり人を引き込む話し方だったのが印象的。

Joy Torab, Vice President, Workplace Experience, BILL

Brett Hautop, Founding Partner, Workshape

セッションの主なやり取りは以下の通り。

  • ベイエリアの現状はまだアフターコロナの混沌から完全に抜け切っておらず、来年ぐらいまでは移行期が続くだろう。
  • 30分を超えると、通勤を苦痛に感じる割合が格段に増える。
  • リモートワークの効率性は明らかで、それを軽視して出勤を無理強いするのはいただけない。
  • Google, Meta, Appleなどが実践している働き方をそのまま踏襲してもダメ。あなたの会社にはあなたの会社にあったソリューションを独自に見つける必要がある。
  • 従業員同士の結束を固める=チームビルディングのための場所としてオフィスは重要。

ベイエリアの企業も個人も、リモートワークとオフィス出勤のバランスを筆頭として、いまだ体験したことのない状況のなか手探りで新しい働き方の落としどころを模索し続けている。そして、両氏の例のように、ベイエリアの先進的な企業は職場体験改善の要職を新たに設置して、この課題に積極的に取り組もうとしている。


さて、前回ご紹介したベイエリアの市況について振り返ってみたい。

コロナ発生後、知的労働職を含め多くの労働人口が生活コストの高いベイエリアからテキサスやマイアミなどに移った。

IT企業が多いベイエリアではハイブリッド型労働スタイルが定着しており、完全リモート・出社日数が非常に少ない労働者も多い。

昼間人口の減少が、サンフランシスコなどの繁華街のエコシステムに大きな影響(ダメージ)を与えた。

一方、テック大手企業やスタートアップは依然シリコンバレーに在籍しており、イノベーションを産み続けている。

そのダメージを受けたサンフランシスコを中心に生成AI関連のコミュニティが凄まじい勢いで増殖中である。

つまり、

サンフランシスコではかなりの人が去り、ダウンタウンは治安も悪化して地元経済が苦境に喘ぐ中、AIという新しい旗のもとに熱量の高いクラスターができつつある。

シリコンバレーも、レイオフなどの調整がありつつ、AIがドライバーとなってこれまで通りかそれ以上のモメンタムを維持している。

という感じ。

いわゆる真のスマートシティがサンフランシスコで生まれる?

アフターコロナでショッピングモールや飲食店もかなり復活してきた一方、コロナ禍で自炊やオンラインショッピングがデフォルトになった人も多いかと思う。また、Z世代は環境問題に敏感で、むやみに新しい洋服を買うことをしなくなった傾向がある。

サンフランシスコ・ダウンタウンの荒廃(注:サンフランシスコ全体が荒廃しているわけではなく、ダウンタウンのエリア)は、前述した昼間人口の減少、市の政策、もともとあったホームレス問題などに加えて、そういった人々のライフスタイルの変化によるところも大きいと思う。

現在サンフランシスコ行政側は必死で立て直しに力を注いでいるが、もしサンフランシスコのダウンタウンが活気を戻した時は、これまでとは相当異なる街並みが広がっているかもしれない(例えば全米にあるチェーンストアが一切ないとか、公園などの公共エリアが大幅に増えるとか)。個人的にはあまりにフューチャリスティックになりすぎず、昔の面影を残したダウンタウンになってほしいのが本音だけれど。

改めて、新しい働き方

特にAI新規スタートアップおよびその予備軍は、コワーキングスペースよりさらに密度の高い、ハッカーハウスと呼ばれる寝食も共にして仕事ができる拠点を活用していたりする。その場合、ハッカーハウスの運営者が、入居者をある程度選別して質を保っているらしい。それ以外にチームで一軒家やアパートを借りたりもしている模様。

ベイエリアの一般企業の間ではリモート/ハイブリッドがデフォルト=自宅メイン・ときどきオフィスとして働く一方、AI事業界隈では、そのようにチームが住処を共にしてがっつりAIの構想をディスカッションして製品開発に明け暮れる、という潮流が生まれてきている。

そこから言えるのは2つ。① いずれの場合も、”家” がメインのワークスペースであり、オフィスではない。 ② シリコンバレーで何かをゼロから作り出す時、熱量高く同じ時間・空間を共有して作業するのは昔も今も変わらない。OpenAIのお家騒動が記憶に新しいが、結局は人と人との密なコミュニケーションが大切ということ。

画一的な働き方は終わった。これからは各企業・各個人それぞれが最適な働き方を見つけて実践していく時代になったのだと改めて感じた。


補足コメント。今回のイベントのセッションで何回か繰り返されたフレーズがある。After all, Bay Area is Bay Area – 結局ベイエリアはベイエリア。いろいろあるけどベイエリアはイノベーションを生み出す土地であることには変わりがなく、しぶとくそういったかんじでありつづける、ってことでしょうか。  

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